【dear,klairs】世界を魅了するK-ビューティー市場における持続可能な成長戦略

世界中で愛されているK-ビューティー業界において、品質向上と成分へのこだわりを貫き、いち早くグローバル市場を開拓してきたdear,klairs。その優れた商品力を武器に、アメリカやヨーロッパといった競争の激しい市場だけでなく、品質に厳しい日本市場においても目覚ましい成果を上げています。 熾烈なグローバルビューティー市場において、dear,klairsがどのように持続可能なブランド競争力を確立してきたのか。その戦略と成功の秘訣を Japan Market Growth Lab の 豊田葉月様に伺いました。

目次

  1. 新商品開発で、ブランドの未来を切り拓く
  2. 顧客を惹きつける、商品力という名の信頼
  3. 魅力を引き出す効果的なネーミングとキーワード戦略
  4. メガ割で差をつける、競合分析の重要性
  5. 最適な広告戦略とSNS活用でブランド認知度を高める
  6. Qoo10の強みを際立たせる、3つのメリット

新商品開発で、ブランドの未来を切り拓く

― Qoo10への出店を決めたきっかけは何ですか?

2017年に本格的に日本市場に進出することになりました。当時、K-ビューティーはまだ日本で広く認知されていたとは言えませんでしたが、私たちは当初からグローバル市場を視野に入れており、日本市場もまた、その戦略において重要な位置を占めると考えていました。

dear,klairsは、Eコマースプラットフォーム「ウィッシュトレンド」および183万人もの登録者を有するYouTubeチャンネル「ウィッシュトレンドTV」を展開するウィッシュカンパニーによって運営しています。早くからアメリカとヨーロッパ市場での成功をおさめ、グローバル市場でのブランド競争力を実証したため、日本市場でも良い結果が期待できると判断しました。

― 現在のQoo10における販売状況はいかがですか?

売上がピークを迎えたのは2022年11月でした。当時、ビタミンセラムが「ビタミン」というキーワードとともに、日本の顧客から熱狂的な支持を集めました。しかし、最近では顧客の関心が、従来のビタミン成分から、より革新的なPDRNなどの新成分へと移行しつつあり、ビタミンセラムの成長はやや鈍化しています。

このような市場の変化に対し、私たちは常に新しい商品を開発し、差別化された戦略で対応しています。その一例として、新たに発売した「メープル樹液ライン」は、Qoo10のリアルタイムランキングで3位を獲得し、顧客から非常に好意的な反応を得られました。

この成功は、新商品の発売がいかに重要であるかを証明しています。 今年のさらなる成長を目指し、日本の顧客に向けて、より多様な新商品を提供する計画です。

顧客を惹きつける、商品力という名の信頼

― 多くの顧客がdear,klairsを繰り返し利用し、愛用する理由は何でしょうか?

多くの顧客に支持される最大の理由は、間違いなくその商品力にあります。日本の顧客は、一度使用して良さを実感した商品を継続して使う傾向が非常に強いです。dear,klairsの商品は、優れた成分と実証済みの効果によって、高いリピート率に繋がっています。

私たちは、リピート率を高めるための特別なマーケティング戦略に頼るのではなく、高品質な商品を着実に提供することに注力しています。商品の質が高ければ、顧客は自然と戻ってくると信じており、実際、多くのお客様がその満足度を示し、継続的に商品を購入してくださっています。

このような忠実な顧客層を確立できた背景には、商品に対する非常に厳しい基準があります。自社の基準が厳しいので新商品の開発は決して容易ではありませんが、お客様との信頼を維持するためには、高いクオリティの基準を守ることが重要だと思います。

― 他のブランドと差別化するための独自の戦略はありますか?

Qoo10のように多くのブランドが集まる市場では、似たような商品も多く、競合他社が互いの戦略をベンチマーキングすることで、全体的にレベルが上がる傾向があるため、差別化は簡単ではありません。

しかし、dear,klairsは、顧客一人ひとりの悩みに寄り添い、個別のニーズに応じた商品を提供することで、他ブランドとの明確な差別化を実現しています。年齢や性別に関係なく、すべての人が安心して使用できる商品を開発しているため、異なるラインの商品を使っても、お客様が期待する最適な効果を得ることができます。

例えば、多くのブランドが同じラインの美容液、化粧水、乳液などをセットで使用することを推奨する中、私たちは顧客が自身の肌の悩みに合わせて、弾力ケア、ニキビケアなど、自由に商品を組み合わせられるようにしています。

また、高い品質基準を維持しながら、常に新しい商品を開発し続けることも大きな特徴です。顧客に目新しさを提供するために、パッケージデザインや商品構成を変更することも有効な戦略ですが、私たちはこれらの戦略が短期的な成果に終わる可能性が高いと考えています。長期的な顧客との信頼関係を築くためには、商品そのものの品質が最も重要です。

過去には、桜をモチーフにした限定パッケージを発売し、顧客から好評を博したこともありましたが、パッケージが変わっても商品自体が変わらなければ、いずれ顧客は飽きてしまうため、短期的な効果ではなく、長期的な成長の基盤を築くことに注力しています。

― 日本市場ならではの特徴と、進出にあたって考慮すべき点はありますか?

日本の顧客は、商品をネットで購入する前に、実際に店舗で体験することを重視する傾向があります。そのため、日本市場においては、実店舗とオンラインの連携が非常に重要となります。

実店舗を展開して顧客との接点を広げることで、オンラインでの売上も自然に伸びていきます。これまでは、オンラインを中心に事業を展開してきましたが、今後は実店舗にも本格的に注力し、両方の面からブランド認知度を高めていく予定です。

魅力を引き出す効果的なネーミングとキーワード戦略

― 商品ページを作成する上で、特に重視している点は何ですか?

K-ビューティーに関心を持つ顧客は、即効性のある改善や効果を期待して商品を購入する傾向があります。そのため、商品の効果が直観的に伝わるように名前をつけること(ネーミング)が重要です。

例えば、メープルセラムの正式名称は「メープルインフュージングセラム」ですが、「インフュージングセラム」という言葉だけでは、どのような効果があるのかすぐに理解するのは難しいでしょう。そこで、Qoo10では、この商品を「メープル毛穴セラム」という名称で登録し、毛穴への効果を直接的に伝えるようにしました。

また、商品ページを作成する際には、Qoo10の「JQSM>プロモーション>プラス展示」メニューにある人気キーワードリストや、Google、Yahooの検索ボリュームを参考にしています。商品に関連するキーワードの中から、検索ボリュームが多いものを3つ選び、商品の魅力を最大限に引き出すように工夫しています。

例えば、「メープルセラム」のキーワードとしては、「毛穴」「弾力」「ツヤリング」を選びました。同じく「ツヤ」を表現する言葉でも「水光」「潤光」「光彩」などに細分化できますが、その中でも最新の検索トレンドを基に、“ツヤリング”をメープルセラムの代表的なキーワードの一つとして選定しました。このように、商品の魅力をしっかりと伝えながら、お客様が関心を持つキーワードを見つけることが重要です。

メガ割で差をつける、競合分析の重要性

― メガ割では、どのような戦略が効果的でしたか?

メガ割は、Qoo10で非常に効果的なプロモーションであり、短期間で売上を大きく伸ばすことができます。dear,klairsも通常の20倍以上の売上を記録した経験があります。

メガ割では、単品販売よりも、人気商品を組み合わせたセット販売と、一つの商品ページで多様なオプションを提供する戦略を採用しています。Qoo10の内部広告や外部SNS広告を活用する際も、ランディングページを一つに絞る方が効果的です。

また、メガ割期間中は、競合他社の割引率や商品構成を徹底的に分析し、自社の割引率や特典を戦略的に調整します。普段から競合の動向を注視していますが、メガ割では特に、各社がリソースを集中投資して戦略的なマーケティングを展開するため、競合のメガ割企画のモニタリングが不可欠です。

競合の通常価格、セット構成、参考価格からの割引率だけでなく、他のプラットフォームでの販売価格を調査し、競合が提供する実質的な特典を正確に把握し、それを基に戦略を立てることが重要です。

広告戦略とSNS連携で広がるブランドの魅力

― 広告はどのように活用していますか?

私たちは、様々な広告を活用していますが、特に「タイムセール」「キーワードプラス」「Qスペシャルプレミアム」の3つを重視しています。これらの広告は、それぞれ異なる特性を持っているため、状況に応じて使い分けています。

「タイムセール」は、短時間で大幅な割引を提供する広告であり、「1,000円ぽっきり」企画やインパクトのある割引イベントに効果的です。一方、わずかな割引では、期待する効果を得られませんでした。

「キーワードプラス」は特定のキーワードで検索した際に、上段に商品を露出させることができる広告です。商品を広く告知できるためとても効果があり、常に活用しています。パワーランクアップ」は、新商品や特に売り出したい商品がある場合に使用しています。

「Qスペシャルプレミアム」は、メガ割期間中のブランド認知度向上に役立ちます。先着順で枠が埋まってしまうため、広告の申し込みが開始されたらすぐに申し込む必要があります。そのため、私たちは事前に申し込み日時を把握し、確実に枠を確保するようにしています。

― インフルエンサーやSNS広告をうまく活用するためのポイントはありますか?

dear,klairsは、韓国だけでなく、日本やアメリカでもTikTokインフルエンサーとの連携を積極的に行っています。私たちが重視しているのは、インフルエンサーの知名度ではなく、ブランドとの相性の良さです。

実際に、「めめろん」というインフルエンサーと協業した際には、彼女が私たちの商品を紹介した直後から売上が目に見えて増加しました。彼女は、dear,klairsの優れた成分や効果をフォロワーに効果的に伝え、「ツヤリング」という新しい言葉を生み出すなど、顧客からの熱狂的な反応を引き出しました。

新規顧客を獲得するため、様々なインフルエンサーを活用しています。例えば、ニキビケアや敏感肌ケアなど、特定の肌タイプに特化したインフルエンサーと連携することで、新しい潜在顧客にdear,klairsを知ってもらうよう努めています。

また、SNSも積極的に活用し、特に若い世代に人気のX(旧Twitter)やInstagramに注力しています。一方的な情報発信ではなく、顧客との積極的なコミュニケーションを通じて、関係を深めることを重視しています。例えば、Xでは、顧客からの質問にはできる限りすべて回答するようにしています。

Qoo10の強みを際立たせる、3つのメリット

― 他の日本のプラットフォームと比較して、Qoo10の特長は何でしょうか?

Qoo10の最大の特長は、日本国内でK-ビューティーに関心を持つ消費者が最も多く集まるプラットフォームであることです。そのため、私たちの商品を効果的に宣伝し、販売するための最適な環境と考えています。

実店舗や他のプラットフォームでは、成分に関する理解度が低い顧客が多い傾向にありますが、Qoo10の顧客は美容に対する知識が豊富で、成分や効果を重視するため、私たちの優れた製品力を最大限にアピールすることができます。

また、他の日本のプラットフォームと比較して、若い女性の顧客層が多いことも特長です。SNS広告への反応が早く、インフルエンサーを活用したマーケティングの効果も高いため、新商品を発売する際のプロモーションに非常に有利です。

さらに、メイン顧客の年齢層が異なるため、複数のチャネルを運営する際に、それぞれの特性に合わせた戦略を展開しやすいという利点があります。私たちは、Qoo10、Amazon、楽天市場のすべてで商品を販売していますが、各プラットフォームで購入する顧客の性別、年齢層、購買特性はそれぞれ異なります。

例えば、Qoo10の顧客は、メガ割期間中にセット商品を購入する傾向がありますが、Amazonでは単品購入の割合が高いです。セット商品は客単価が高いため、Qoo10では、顧客にプレゼントを提供したり、大幅な割引を実施したりと様々な特典を提供しやすいというメリットがあります。

― これから出店を検討されている販売者の方々に、何かアドバイスをお願いします。

ビューティー商品を扱う販売者の方々にとっては、出店を迷う理由は見当たらないと言っても過言ではありません。

メガ割は、日本国内で非常に高い認知度と話題性を誇るプロモーションです。これを効果的に活用することで、ブランドの成長を飛躍的に加速させることができます。

通常、ブランドの認知度を高め、独自の割引イベントを実施するには、多大な費用と時間が必要です。しかし、Qoo10では、プラットフォーム自体の高い知名度と急速な成長力を利用することで、少ない費用で効率的にブランドを消費者に訴求し、売上を伸ばすことができます。