目次
- Qoo10を足がかりに日本市場拡大を本格化
- 日本の20〜30代女性の心をつかむ感性マーケティング
- 韓国発ブランドが日本で躍進!成功の秘訣はローカライズ戦略
- オンラインで培った実績を活かし、実店舗展開とブランド力の強化へ
Qoo10を足がかりに日本市場拡大を本格化
―自己紹介とブランド紹介をお願いします。
こんにちは、iHEAL代表のパク・ジョンミンです。現在、女性向け健康機能食品ブランドを運営しており、乳酸菌事業に携わって今年で7年になります。iHEALは、2018年に本格的にスタートし、これまで女性の健康とライフスタイルに寄り添う乳酸菌製品を中心に開発を進めてきました。
実は、最初から健康食品業界にいたわけではありません。以前は化粧品の流通や卸売事業を行っていましたが、「いつか自分のブランドを作りたい」という強い思いから健康食品、特に女性向け乳酸菌の分野に飛び込むことを決めました。
そして、2023年の初めにはQoo10に出店し、グローバル市場にも一歩近づくことができました。
―日本市場進出のきっかけとQoo10を選んだ理由は何ですか?
数ある国の中で日本市場を選んだのは、まず地理的に近く、配送コストを比較的抑えられる点が魅力的だったからです。また、日本の消費者は韓国製品への関心が高く、市場への参入が比較的容易だと判断したことも大きな理由です。
特にQoo10は、日本を代表するECサイトでありながら韓国ブランドに強いため、私たちは最初の進出先として迷わずQoo10を選びました。
実は、当初は東南アジアのプラットフォームから海外展開をスタートしました。しかし、予想に反してハードルがかなり高く感じられました。例えば、プロモーション自体が不足していたり、UI(ユーザーインターフェース)も使いにくかったりと、初期の運営は決して簡単ではありませんでした。
しかし、Qoo10は全く状況が異なりました。日本語が分からなくても、JQSM(販売管理ツール)が完全に韓国語に対応していたので運営に困りませんでした。UI/UX(ユーザーエクスペリエンス)も非常に使いやすく、そのおかげで販売をスムーズに始められ、Qoo10では食品カテゴリーでランキング1位を獲得するなど、素晴らしい反響をいただきました。
Qoo10での成功をきっかけに、日本の他ECサイトの担当者からも声をかけてもらえるようになり、結果として多店舗展開も進みました。
もちろん、最初からすべてが順調だったわけではありません。最初の1年間は試行錯誤の連続でした。しかし、韓国で実績のあったマーケティング用のコンテンツを日本の感性に合わせて調整し活用したところ、次第に顧客から良い反応が得られるようになりました。
現在では、MetaやInstagramなど、様々なSNS広告を連携させて活用することで、iHEALのブランド認知度は日本で着実に高まっています。
―海外オンラインチャネルの中でQoo10の売上比率はどのくらいですか?
海外の売上を見ると、Qoo10が約70%と最も大きな割合を占めています。現在iHEALはQoo10を含め、合計5つの海外オンラインチャネルで事業を展開していますが、日本の顧客の割合が非常に高いため、日本専用の自社サイトも別に運営しています。
特にQoo10では「メガ割」期間に売上が大きく伸び、この時期には韓国と日本の売上比率が5:5とほぼ同じになります。Qoo10以外の日本のECサイトでも同様の商品を販売していますが、顧客層や年齢層が異なるため、運用方法も変えています。例えば、他のECサイトではレビューを商品詳細ページに積極的に反映させる一方、Qoo10では動画コンテンツを作成することが効果的です。
日本の20〜30代女性の心をつかむ感性マーケティング
―iHEALの主な顧客層との獲得戦略について教えてください。
主な顧客層は20~30代の女性で、特に日本では女性たちのインナーケアへの関心が高まっています。そのため、彼女たちが共感できるポイントを軸にブランドを構築しています。
こうした顧客層を取り込むために、Instagramを活用したマーケティング戦略を強化しました。たとえば、メガ割やメガポといった代表的なセール期間には、Instagramのフィード向けに特別な画像を制作し、『#iHEAL #女性乳酸菌 #膣ケア #インナーケア』といった重要なハッシュタグを積極的に使用しています。
また、SNSのハッシュタグ検索や人気ランキングの確認、顧客レビューの分析を通じてトレンドを調査しています。顧客の反応を確認し、そのフィードバックを次のコンテンツや「商品詳細ページ」内に反映することもあります。サムネイル画像や商品ページは、単なる製品説明にとどまらず、Z世代の女性が好む感性的な演出や色合いを考慮して制作しています。
日本の消費者は欧米の消費者とは異なる購入傾向を持っています。例えば、欧米では大きな画像や明確な情報を求めるのに対し、日本の顧客は可愛らしく繊細なデザインや演出を好むことが多いです。
そのため、同じ製品でもプラットフォームや市場の特性に合わせて商品詳細ページのデザインや運営方針を変更しています。商品詳細ページは単なる翻訳にとどまらず、現地の消費者トレンドを取り入れた内容にしています。
―女性乳酸菌のピンク色をショップコンセプトにしたデザインはどこからインスピレーションを得ていますか?
私たちの製品が女性乳酸菌であることから、ターゲット層に最適な色を考えました。顧客レビューで「ピンク色のパッケージが可愛い」や「食べると気分が良くなる」といったフィードバックが多く寄せられたため、ブランド全体のトーンをピンクで統一することにしました。主に20〜30代の女性がターゲットであるため、ピンクの持つ柔らかく愛らしいイメージがブランドアイデンティティとよく合うと考えています。
デザインやバナー画像を企画する際には、食品カテゴリーだけでなく、化粧品カテゴリーの感覚も参考にしています。特に日本で人気の韓国ビューティーブランドの商品ページやデザインスタイルを常にチェックし、その感性やトーンをiHEALらしく取り込むよう努めています。
セール時期にはデザインの更新に特に注意を払っています。メガ割やメガポが開催されている時は、ショップのメインページを頻繁にリニューアルし、顧客に常に気を配っている、動きのあるブランドという印象を与えるよう心がけ、視認性が高く目立つバナーデザインを意図的に上部に配置しています。
セール時期以外でも、3ヶ月ごとにメインページを更新しています。日本の記念日や年末年始など、文化的なイベントに合わせてブランドのトーンを調整しています。常に新鮮でトレンディなイメージを保つことが、私たちのデザイン戦略の要です。
―商品詳細ページには、芸能人の画像や特許情報など様々な内容が含まれていますが、企画する際に特に重視するポイントは何ですか?
最も重視しているのは信頼感です。日本の顧客は韓国の芸能人に対して好意的で、韓国の女性がよく食べる商品なら私も試してみたいと感じることが多いです。そのため、芸能人や著名人の画像コンテンツをできるだけ多く配置するようにしています。
芸能人を起用する際も、無計画に選ぶのではなく、その芸能人が日本でどれくらい知られているかをまず調べます。最近では、K-POP第2世代のガールグループ「KARA」が日本で再び人気を集めているため、KARAのメンバーであるホ・ヨンジさんと協力し、「ホ・ヨンジが食べる女性乳酸菌」というコンセプトでマーケティングを行いました。このモデル起用後、広告効果と購入率が大幅に改善しました。
また、商品詳細ページには摂取方法、主要成分、特許情報など具体的で客観的な情報も充実させています。情報量が多くても複雑に見えないように、デザインの配置や情報の順序を工夫しています。
日本の顧客はブランドと製品への信頼を非常に重視し、一度選んだ製品を簡単に変えず、商品詳細ページの情報を丁寧に確認する傾向があります。そのため、日本語ページを企画する際は、テキストとデザインの両方を顧客の視点で正確かつ信頼感のあるものにするよう心がけています。
―単品販売ではなく、セット販売を中心にしている理由は何ですか?
健康機能食品は短期間で効果を実感するのが難しいため、顧客が2〜4ヶ月以上継続して摂取できるようなセット販売を行うことが適切だと判断しました。そのため、日本では1ヶ月分の単品販売よりも、3+1ヶ月や2+1ヶ月といったセット商品を中心に販売しています。韓国の自社サイトでも3+1セットの販売が最も多かったことから、日本市場でも同じ戦略を採用しています。最初は「3+1は多すぎるのでは?」と心配しましたが、一度購入した顧客が再購入する際にセットを好むことが多いことがわかりました。ただし、Qoo10では四半期ごとにメガ割があるため、商品の消費サイクルを考慮して2+1セットの導入も検討しています。
さらに、メガ割期間中には、女性向けの乳酸菌とデリケートゾーンのケア商品を組み合わせたセット商品も企画しています。このようなセットは顧客に新しい体験を提供でき、好評を得ています。たとえば、メガ割中のレビューでは「使ってみたら爽快だった」「一緒に使うと満足度が上がった」などの声があり、その後、ケア商品の単品購入につながることも多いです。今後は商品の数を増やすのではなく、一つの製品を様々な方法で企画し、顧客に新しい体験を提供することに注力していく予定です。
韓国発ブランドが日本で躍進!成功の秘訣はローカライズ戦略
―iHEALブランドが検索結果でよく上位に表示されるのは、何が理由だと思いますか?
現在、Qoo10では「iHEALビーナス」や「iHEALビーナス乳酸菌」といったブランド名を含む検索キーワードが1位と2位を記録しています。これはブランドの認知度がしっかりと浸透していることを示す指標だと考えています。その背景には、SNSを活用した継続的な動画広告のマーケティングが大きく貢献しています。
当初、日本の顧客に向けた専用コンテンツを制作する余裕がなかったため、韓国で作成した広告動画に日本語の字幕を付けて利用していました。しかし、時間が経つにつれて日本市場向けのコンテンツの必要性を感じ、現在では日本人俳優を起用し、日本語で作成した30~40秒の広告動画を公開しています。
韓国で効果が確認された広告の形式を日本市場に合わせてローカライズしたことで、迅速に成果を上げることができたと考えています。さらに、「フォロワー10万人突破記念!iHEALからのプレゼント!」や「感謝クーポンの提供」といった様々なイベントを通じて、顧客との接点を絶えず広げてきたことも、ブランドに対するロイヤリティ向上に効果的でした。
―外部からの流入比率が約25%と高いですが、特別な広告や戦略はありますか?
外部からのアクセスが多い理由は、SNS広告を積極的に運用しているためだと考えています。特に『Single ONE AD』を活用して、MetaやInstagramなどの外部広告を効果的に展開しています。メガ割期間中は、内部広告と外部広告の比率を3:7にして、外部チャネルに力を入れています。
内部広告についても「タイムセール」や「パワーランクアップ」「キーワードプラス」「スマートセールス」「Mega AD」など、ほぼすべての広告を幅広く利用しています。「Qoo10 Analytics」のデータを見ると特にパワーランクアップとキーワードプラスなどの検索型広告が最も効率的であることが示されています。
私たちは広告費を節約するのではなく、ブランド認知度を高めるための長期的な投資と捉えています。商品を継続的に露出させ、顧客を引き付けることで、日本市場で徐々にブランド認知度を築くことに力を注いでいます。
オンラインで培った実績を活かし、実店舗展開とブランド力の強化へ
―今のところ、日本でのiHEALの認知度はどのくらいだと考えていますか?また、長期的な目標は何ですか?
正直に言うと、まだ道のりは長いと感じています。オンラインでは徐々に成果が出ていますが、ブランド認知度を確実に高めるためには、オフラインの流通チャネルへの進出が欠かせません。最近ではLOFTやドンキホーテといった日本の主要なオフライン店舗から出店の問い合わせが来ていますが、実際に出店するまでには少し時間がかかりそうです。
日本の流通担当者はオンラインでの販売結果を重視しています。そのため、Qoo10での売上データを整理し、積極的に共有して説得を試みています。オンラインの成果を基にオフライン展開につなげる好循環を作ることが、私たちの中長期的な目標です。
昨年、「Qoo10 AWARDS 2024」の「新人賞」を受賞したことは、私たちにとって非常に意味のある成果でした。短期的な売上を超えて、ブランドの信頼を築き、ファン層を広げ、最終的には「最優秀賞」の受賞を目指しています。