【now&than】口コミで広まった新規ブランドによるインフルエンサーマーケティングの活用法

最近、日本のオンラインショッピングモールQoo10で急成長を遂げている韓国のビューティーブランド「now&than(ナウアンドダン)」。2022年冬に新しく立ち上げられたブランドでありながら、短期間で日本市場の注目を集め、実店舗でも成功を収めています。今回のインタビューでは、now&thanの事業を統括しているチェ・ジョンジェ理事にお話を伺い、Qoo10に出店したきっかけや成功の秘訣、そして今後の計画について詳しくお聞きしました。劇的な成長の裏には、どのような戦略と努力が隠されているのでしょうか?

目次

  1. 韓国を超える売上?日本市場での驚くべき成功
  2. 運営代理店との連携で効率的なショップ運営
  3. 口コミを活用!インフルエンサーマーケティングの効果
  4. インフルエンサーの声を反映した新商品開発で信頼性向上
  5. 新規ブランドの成長を牽引するランキングシステム

韓国を超える売上?日本市場での驚くべき成功

―Qoo10に出店したきっかけを教えてください。

日本市場の拡大は、韓国でビューティーカテゴリーを扱う企業にとって重要な課題です。日本の消費者はK-ビューティーに強い関心を持っており、特に若い世代から多く利用されているQoo10は最適なプラットフォームであり、出店は自然な選択でした。 

now&thanは、韓国で30年以上ヘア製品を開発・販売しているクリエイトヘアグループが2022年に新しく立ち上げたブランドです。韓国国内のオンラインショッピングモールへの出店と同時に、Qoo10への出店も進め、韓国と日本の両方で急速にブランドを成長させています。

―現在の販売状況や売上はいかがですか?

現在、now&thanはQoo10のほか、楽天、Amazonなど、多くの日本のオンラインプラットフォームに出店しており、最近ではオフラインでも流通ネットワークを拡大し、約700のバラエティショップに出店しています。

特にQoo10では、ブランドローンチ初期から急速な成長を遂げており、日本での売上の中で最も大きな割合を占めています。韓国のブランドでありながら、日本と韓国のオンラインモールにほぼ同時に出店した結果、日本での売上が60%、韓国が40%と、日本市場がより大きなシェアを持っています。

オフライン市場も急速に拡大していますが、期待していたほどの成果にはまだつながっていません。オンラインとの違いを最近実感し、戦略を調整しているところです。しかし、両チャネルを成長させることで得られるシナジー効果は確かに存在すると考えており、今後はオフライン広告予算を増やし、オフラインでの展開にも力を入れていく予定です。

運営代理店との連携で効率的なショップ運営

―日本市場に早期に定着できた秘訣は何かありますか?

私たちは日本市場に関する内部ノウハウが不足していたため、運営代理店を利用してQoo10のショップ運営をすることに決めました。運営代理店は現地市場への理解と実務経験が豊富で、新しいブランドが迅速に定着するのに大きく貢献しています。新たに社員を採用する費用や固定費の負担を避けつつ、日本市場に進出できるという利点があります。

ブランドの方向性や大きな戦略は本社で管理しており、広告運営や店舗管理、配送など詳細な部分は運営代行会社が管理しています。この分業体制のおかげで、内部リソースを効率的に活用でき、戦略に集中しながらも実行力を確保することができました。

最近では、韓国で日本市場を対象とした運営代行店が多様化し、専門性も向上しています。そのため、試行錯誤する時間を短縮し、着実にブランドを育成するための賢明な戦略だと考えています。

口コミを活用!インフルエンサーマーケティングの効果

―新規ブランドとしての認知度を高めるためにどのような戦略を展開していますか?

now&thanが急速に成長できた最大の要因は、「インフルエンサーマーケティング」にあると考えています。2023年7月頃、日本のあるインフルエンサーが、自発的に私たちのヘアオイルをおすすめし始め、口コミが広がりました。特にInstagramのリールやフィードを通じて拡散し、9月から本格的な反応が見られ、11月のメガ割期間には爆発的な売上増加につながりました。

この口コミ効果は、短期間でブランド認知度を大幅に向上させるきっかけとなりました。最初の広がりは偶然のものでしたが、その機会を逃さず、インフルエンサーとの緊密な連携を通じて消費者の信頼を築くことができ、自然な形でブランド広報が実現しました。

now&thanのヘア製品は、継続的な使用による長期的な改善効果が期待できるため、Instagramのリールを積極的に活用しました。リールでは、実際に商品を使用して髪質が改善される過程をフォロワーが確認でき、オーガニックな流入を増やすことができました。

「Qoo10Analytics」を確認すると、「URLダイレクト」による流入比率が最も高くなっています。これは、インフルエンサーがリールやフィードに商品URLを掲載し、フォロワーがそのリンクを通じて直接商品ページにアクセスしているからです。

―インフルエンサーと効果的に協業するためのノウハウはありますか。

多くのブランドはインフルエンサーを選ぶ際、フォロワー数を基準に判断することが多いですが、私たちは製品との適合性を最優先に考えています。実際、フォロワーが5万人未満のインフルエンサーと協業した際、予想以上の反響を得たことがあります。

インフルエンサーを選ぶ際には、彼らのコンテンツがヘア製品とどれほど関連しているか、韓国製品への関心があるか、そして今後の成長可能性を細かく分析します。

過去にヘア製品を宣伝した経験があるか、その効果をフィードから確認します。韓国では、カテゴリーの関連性が多少薄くても「トップインフルエンサー」と協業すれば効果が得られますが、日本市場ではカテゴリーの関連性が最も重要です。フォロワーが多い有名インフルエンサーでも、カテゴリーの関連性がないと効果は期待しにくいです。

韓国ではインフルエンサーが芸能人並みの影響力を持ち、ファンが購買につながることが多いですが、日本では購買は合理的に決定される傾向があります。小さなブランドは予算を効率的に運営するために、主力となるインフルエンサーに集中することが重要です。私たちはフォロワー数が着実に増加しているミドルインフルエンサーを事前に発掘し、持続的な関係を築くことでブランドの主要パートナーとして成長できるよう支援しています。

主要となるインフルエンサーを中心に据えつつ、新しいインフルエンサーを継続的に発掘し、ブランドに新しいイメージを与えるツートラック戦略でブランドイメージを構築しています。

インフルエンサーの声を反映した新商品開発で信頼性向上

―他のブランドと差別化する戦略はありますか?

韓国市場ではすでに一般的な製品であっても、日本では新しいコンセプトとして受け取られることがあります。例えば、ノーウォッシュトリートメントやヘアマスカラは、韓国では日常的なアイテムですが、日本の消費者には新鮮な商品として認識され、好評を得ました。このような市場の違いを敏感に察知し、素早く商品化することが競争力を高める第一歩です。

また、日本現地の美容トレンドを継続的に観察・分析することも非常に重要です。例えば、日本で「ヘアミルク」の人気が高まり始めたタイミングで関連商品を迅速に発売したことにより、多くの顧客の関心を集めることができました。市場の変化にいち早く対応することが競争力となります。

さらに、差別化戦略として、商品開発の初期段階からインフルエンサーに参加してもらうことです。まだ商品化が決定していないテスト段階の商品でも、インフルエンサーが新製品の開発に参加し、フォロワーと改善点を共有することで、自然なマーケティング効果が生まれます。顧客も商品開発のプロセスに関わることで、ブランドに対する信頼感と誠実さが高まる効果があります。

―多くのお客さまが繰り返しnow&thanを訪れる理由は何でしょうか?

韓国のお客さまはビューティー商品を購入するときに無料のサンプルをもらうことに慣れていますが、日本のお客さまはサンプル文化にあまり馴染みがないため、サンプルを提供した際の反応が非常に良かったです。

そのため、商品を購入された際には必ずシャンプートリートメントのサンプルを積極的にお渡ししています。これにより、ヘアオイルを購入したお客さまが自然にトリートメント製品にも興味を持ち、セット商品を購入する流れを作ることができました。

さらに、製品の香りの開発にも力を入れており、日本のお客さまから「香りが良い」との好評を継続的にいただいています。これらの要素が組み合わさり、顧客ロイヤリティの向上に大きく貢献したと考えています。

また、商品データを詳細に分析しています。例えば、オイルを購入した方の中でシャンプートリートメントを購入した割合を調べるなど、再購入する顧客の周期や商品バリエーションとの関連性を多角的に分析し、売上を増やすためのセット構成を検討しています。

当社の商品は約3ヶ月使用できる量ですが、メガ割が大体3ヶ月に一度開催されるため、メガ割の時期に購入していただき、次のメガ割の時期に再度購入するという流れができています。

―商品ページを作成する際に最も重要だと思う点は何だと思いますか?

商品ページを作成する際には、顧客がページをじっくりと見るように工夫することが重要です。韓国向けの商品のページを作る際には、多くの試行錯誤を重ねて理想的な形に仕上げたため、日本語版の商品ページでは特別な現地化作業は行っていません。

一般的に、顧客は商品ページの20〜30%程度しか見ずに離脱してしまいますが、私たちは顧客が70%以上スクロールするようなコンテンツ構造を考え抜いてきました。顧客の悩みに共感し、問題解決の方法を明確に示し、ブランドの信頼性を伝える言葉とイメージに重点を置いています。

now&thanは新しいブランドですが、親会社が30年以上のヘア製品のノウハウを持っていることを強調し、信頼感を高めるよう努めています。現在は英語を中心としたパッケージを使用していますが、日本の顧客に「この製品がK-ビューティー製品」であることを強調するために、ハングルをパッケージに導入することも検討しています。

―メガ割はどのように活用していて、どんな戦略が効果的でしたか?

メガ割期間は、通常の時期よりも最大で10倍近い売上を達成できる非常に重要な時期です。特に初日の売上が大きな影響を持つため、その日に向けた戦略的な準備が欠かせません。

しかし、メガ割が行われない期間も重要です。メガ割期間は競争が激しいため、モールのセールが開催されていない時期に事前にランキングを上げることで、メガ割期間中にブランドの認知度を直接的にも間接的にも高めることができます。通常時に上げたランキング順位と認知度が、メガ割時に効果を発揮します。特に新しいブランドの場合、メガ割前にランキングを維持し、認知度を高める努力が必要です。

メガ割期間は、競合他社の分析にも力を入れています。注目される商品や積極的なマーケティング施策が行われるため、他店の「ショップページ」や「商品詳細ページ」のコンテンツ、製品構成、価格などをモニタリングし、良いコンテンツや戦略があれば参考にして自社ブランドにも取り入れています。

さらに、フォロワー数、商品構成、価格帯、詳細ページの質などを総合的にモニタリングし、急成長しているブランドの特徴を把握して自社と比較します。特にメガ割期間中にフォロワー数がどれだけ増えたかを分析し、ブランドの成長を判断する基準とし、マーケティング戦略を立てる際の参考にしています。

新規ブランドの成長を牽引するランキングシステム

―他のプラットフォームと比較して、Qoo10の特長は何でしょうか?

「ランキング制度」が非常に公平で、信頼できる点が特長です。他のプラットフォームでは広告の実施によって順位が変わることがありますが、Qoo10のランキングシステムは、販売数などの数字まで公開されるため信頼性が高いです。

これにより、ブランドは意欲的になり、さらに熱心に成長を目指すようになります。実際、Qoo10のランキングシステムの影響力が強まっており、他のプラットフォームでもランキング制度を見直す動きがあると聞いています。

―これから出店を検討されている販売者の方々に、何かアドバイスをお願いします。

Qoo10は、インディーズブランドが急速に成長するチャンスを提供しているプラットフォームです。日本市場への進出を考えているブランドは、Qoo10への出店をためらう必要はありません。

Qoo10で成功するためには、特に若いZ世代のお客さまが多いことを踏まえ、インフルエンサーマーケティングをしっかり理解することが重要です。ただ商品を宣伝するだけでなく、ブランドと共に成長できるインフルエンサーを見つけ、長期的な協力関係を築くことが望ましいです。

日本語があまり得意でなくても、最近はチャットGPTのようなツールを使ってスムーズにコミュニケーションが取れます。日本のインフルエンサーたちもよりオープンな姿勢で協力に応じてくれるため、十分に可能性のある市場だと言えます。